今、目が離せないピサローニ & ホイ・ヘー

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ここ数年目覚しい活躍をしているバリトンとソプラノがいる。ともに40代になったばかりのルカ・ピサローニとホイ・ヘーである。

《ドン・ジョヴァンニ》のマゼットというと、ツェルリーナがフラフラとジョヴァンニについて行ってしまうのも納得という、どこか垢抜けない田舎の青年を連想してしまう。ところが2006年ザルツブルグのマゼットは私の予想を見事に裏切った。スラリと背が高くルックスも良く、どこかノーブルな面影さえ漂わせている。それがルカ・ピサローニであった。もちろん声も申し分ない。きっと数年後にはレポレッロを、そしていずれはドン・ジョヴァンニを歌うであろうと期待させる出会いであった。

ピサローニは1975年ベネズエラで生まれ、4歳でイタリアのブッセート(ヴェルディの生地)に渡った。ここで彼のオペラに対する情熱が育まれたのだ。名テノールのベルゴンツィの指導を受けたピサローニは2001年歌手デビューをし、2002年《ドン・ジョヴァンニ》のマゼットでザルツブルグにデビューした。余談だがピサローニは、このときドン・ジョヴァンニを歌ったハンプソンの義理の娘と結婚している。

2006年以降ピサローニを見たのは2011年METの《エンチャンテッド・アイランド》のキャリバンであった。不気味なメイクと衣装で、キャストを見るまで彼とは気づかなかった。だが2006年から2011年の間に、ピサローニはモーツァルト歌いとしてレポレッロ、プブリオ《皇帝ティートの慈悲》、フィガロ、パパゲーノ、グリエルモ《コジ・ファントゥッテ》などを歌い、ロッシーニのアリドーロ《チェネレントラ》、マホメットⅡ世、バロック・オペラへとレパートリーを広げていた。

そして最近の活躍ぶりを見ると、ザルツブルグ音楽祭では2014年に《ドン・ジョヴァンニ》のレポレッロを、そして2015年には《フィガロの結婚》のアルマヴィーヴァ伯爵を歌っている。40代になったピサローニはモーツァルト歌いとして押しも押されぬザルツブルグの顔になっていた。彼はレポレッロのキャラクターに惹かれると言っていたので当分ジョヴァンニは歌わないつもりだろうか。



しかし、コンサートではドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重唱を、歌っているので、ザルツブルグでピサローニが歌うドン・ジョヴァンニを見ることができる日もそう遠くはないように思う。



もう一人の気になる存在は中国人のソプラノ歌手ホイ・ヘーである。彼女に注目したのは2014年アレーナ・ディ・ヴェローナの《仮面舞踏会》である。かなり若く見えたので、メーリとあまり年齢に差がないのかと思ったら、1972年西安生まれとあるので、メーリより8歳年上であった。アメーリアではよく通る凛とした声で、激しい感情の動きを、気品を失わずに歌い上げていた。

キャリアを見ると1995年上海で、メゾとして《コジ・ファン・トゥッテ》のドラベッラを歌ってデビューしている。2000年のオペラリアで2位になり、ドミンゴの助言でソプラノに変更、2002年にはヴェルディの声国際コンクールで優勝し世界に名を知られるようになった。2005年アレーナ・ディ・ヴェローナ、2006年スカラ座、2008年ウィーン国立、2010年METとたて続けにデビューを飾ったソプラノ・スピントの逸材である。感情が高まりすぎると、オーケストラと微妙にずれることがあるのが気にはなるのだが…。



ヴェルディではアイーダ、《イル・トロヴァトーレ》のレオノーラ、アメーリア、またプッチーニではトスカ、バタフライ、《トゥーランドット》のリューなどを得意としているようで、アレーナ・ディ・ヴェローナには毎年のように出演している。彼女の豊かな声量は野外オペラには欠かすことができない条件であろう。最近はワーグナーも歌い始めている。

東洋人でありながらこれだけのオファーがあるということ自体が、彼女の実力の高さを証明しているのだ。今後ヴェルディの《ナブッコ》《エルナーニ》《ルイザ・ミラー》《運命の力》《ドン・カルロ》などのヒロインへとレパートリーを広げていくだろう。強い喉の持ち主のようだが、無理をしないでディーヴァとして大成してほしい。






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